あしおとでドラマするビジュアルパフォーマンス「アートノカケラ」を振り返る(総合演出目線編)

みなさんこんにちは!あしおとでつながろうプロジェクト・アートディレクターの塩田です。
9月26日(日)、10月3日(日)、10月10日(日)、10月17日(日)に開催されたDance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021 吉野町市民プラザ 共催 イベント、あしおとでドラマするビジュアルパフォーマンスの総合演出として関わらせていただきました。

まず初めに、当日に高熱が出てしまいご迷惑をおかけした皆様にお詫び申し上げます。

イベント総括

今回はイベント総括として、このイベントはいったいどのような想いで創られそしてそこで何が起こっていたのかを改めて考えてみたいと思います。予定通り!と思う部分もあり、なるほどそーなるのね的な新たな発見もあり。
結果として色々なことが詰まったイベントになったかなと思います。
まだ見てないよ!という方はぜひ下記のリンクから配信アーカイブをご覧くださいね!ついでにチャンネル登録もおまちしてます!

さて、このイベントを作るにあたり演出的な最大のテーマは「楽しむ!」だけ!
だけっていうとあれなんですがwまぁそれだけなんですね。
参加者の皆さんが、今をそして日常や未来を楽しむために、何かヒントやアイデア、方法論などを持ち帰ってもらえたらいいなと思っていました。

DAY1:タップによるリズムで楽しむワークショップ
DAY2:タブラの新しい音とリズムに触れて楽しむワークショップ
DAY3:(午前の部)映像に合わせて即興ダンスワークショップ
    (午後の部)廃材からペイントアートを生み出すワークショップ
DAY4:即興パフォーマンス「アートノカケラ」

構成はこんな感じ!盛りだくさんですねwこりゃ大変です。

その結果どうだったかと言えば「楽しそう!」でよかった!ということです。なぜ成功!と言わないかは後ほどw

イベント趣旨はなんだったのか?

このイベントの最大の特徴は完成形を造らないということです。
それは、なぜなのか?
ぱっと考えればわかることですが、完成形の無い舞台の何がおもろいんや!となるわけです。何を観たらいいかわからないですからねwただしココで面白いと考えるのは観客であって参加者ではないというところがポイントです。

参加者の皆さんに「楽しむ」に集中してもらうために、私は完成形をつくることをやめる事にしました。完成形があることでその舞台は成功しますが、裏を返せば失敗もするわけです。

失敗したら楽しくない。失敗したくない、させたくないという思いは楽しくないのではないか。だったら最初から失敗なんて存在しないように演出しちゃえばいいよね!って事だったわけです。そして完成形があることによりやりきってしまう事。それも今回の趣旨とは違うなとも思っていました。

結果として 10月17日(日) に公開された本番(最終日)は見る側にとって多くの??????を頭の上に残したかもしれません。しかし参加者の方々には楽しかった!という声を多くいただいています。なのでこの舞台はやってよかった!であって成功というのとはちょっと違うのです。

最終日に起こった事いったい何だったのか

各日程で様々なことがありましたが、特に最終日に絞って何が起こっていたのかを考えてみたいと思います。私はこの舞台の面白さはカメラ越しが良いだろうとなんとなく思っていました。

そこにはきっと、細胞のように空間を動き回り、緊張したり、笑ったり、戸惑ったり、必死になったり。そしてその先にダンスだったりペイントだったりが生み出される瞬間が映るだろうと考えていたからです。実際はどうだったでしょうか?

本番中、時に立ち尽くし、時にはしゃいで駆け抜けていく、時に声を上げる。普通でない事が許される空間の中では、日常で制限されるような行動も作品の一部となっていきます。そしてそれは、押しつけがましくなく、自然でとてもアーティスティックな時間に見えていました。次は何がおこるのだろう、あの人は何をいったい考えているのだろう、今の音はなんだ!と次々と巻き起こる多くの事。それこそがしっかりとアートになっていました。

私の個人的な考えですが、アートとは日常にあるふとした瞬間のいつもは目を向けない場所に潜んでいて 本来 誰でも感じ生み出せる物なのではいかと思っています。人はつい、上手い下手で様々な物を判断しがちですが、そうでなくても美しい物は存在するでしょうし、そうでないからこそ美しい物もあるでしょう。

そしてこの舞台を通じて私は改めて、やっぱりそうだよな。完成させる事だけが大事ってことじゃないときだってあるよね!よそ見って大事だし、楽しいよね!と実感しました。

しかし、今の時代。ふと別の場所に目を向ける事ができる人が何人いるでしょうか?心豊かに過ごせている人が何人いるでしょうか?もちろん多くいるとは思いますが、そうでない、そしてその方法に気づけない人もきっと多くいると思います。

人間にとって様々なアート体験は体験者にとって、物の見方、考え方の幅を広げ、心豊かに生きていくためにきっと役に立ちます。うまい絵をかく事だけがアートではないよ。上手に音楽をやるだけが、完成された舞台だけがアートではないよ。もちろんそれを目指してもいいけど、そうでなくてもいいんだよ。

参加者の皆さんの行動一つ一つが私にそう言ってくれているようでとて楽しい気持ちになりました。

観る難しさ

私自身、この舞台を見る事に難しさはあるだろうと感じていましたそれは、今の社会の価値観で観てしまうと余計なことが沢山目の前で繰り広げられるからです(まさにカオスでしたがw)
普段だったら、あーー、あーぁーーーーあーーーの連続です。
見る方もなかなか大変な作品となっておりますので心を大きくもってみてくださいね!

ですがこの舞台の本質は、持ち帰ったあと、見たあとにあると思っています。少し心が苦しくなった時、疲れた時映像を見返してみると、そこには周りの目を気にせず楽しむ参加者の皆さんが映っているはずです。

それこを、庭に咲く花のように皆さんの心を癒してくれるでしょう。

冒頭に楽しむだけ!と書きましたが、楽しむことの難しさ、奥深さは大人になればなるほど感じるものではないでしょうか。仕事、人間関係などなど上手くやらなければいけない場面が多いのが社会というもの。

「アートノカケラ」は「楽しめ!」という高度な問いかけを参加者に強いた作品であるとも言えます。
楽しむとは?楽しむきっかけの見つけ方、楽しむ心の発見などなど、楽しむをきっかけに構成されたワークショップを終えた参加者の皆さんは、舞台できっかけを探し、自ら飛び込みそして行動した。私たちは場を作っただけ。

そこには戸惑いもあったし、不安も見えたけれどwそれですら楽しむことって簡単じゃないんだな!やはり!とこちらが考えさせられる瞬間になりました。

参加者の皆さんの姿は、楽しむってこういうことだよ。これでいいじゃん。だって楽しいよ。もっと楽しみたい!とリアルに語り掛けてきます。これは次につながる大きな収穫でもあります。やりきらない良さはこのあたりかもしれません。

そして未来に向かって楽しむ波を広げることが、きっと豊かな社会を作り上げるのだろうと私は感じています。

何かを生み出すということ

舞台に限った話ではありませんが、なぜ演技なのか、なぜ映像なのか、なぜ音楽なのか、なぜパフォーマンスなのか、なぜドキュメンタリーなのかというのは作り手がしっかりと選択し参加する人々で最大限できるように構成するべきだと私は思っています。

うまくやろうとすることは悪ではありません。むしろ達成感や成長などいいことも沢山あります。高度な芸術は人の心を動かし豊かさをもたらしてくれます。ただそれだけの価値観で社会を動かしていると、かならず排除される瞬間がやってくるでしょう。

本当にそれでいいのでしょうか?排除されない物、すべてを受け入れてしまう演出があったっていい。
自然に押しつけがましくなく、そして優しい舞台を「アートノカケラ」の参加者の皆さんが作り上げてくれたなぁと心から思います。感謝!

ストイックに何かを生み出す事も必要だし、それができる人はそうするべきです。しかしそれだけが全てでは決してない、もっと優しく寛容な表現の場があり、そんな場でこそ力を発揮できる人々を私は見てみたいのです。

最後に

楽しむ!だけから始まったこのイベントの制作ですが、多くの未来を残してくれたと思っています。
ご参加いただいた、タブラ奏者の指原一登さん。武松商事、船木さん、吉野町市民プラザのスタッフのみなさん!
皆さんのご協力あってこそ、素敵な体験を提供できたなと思っています。
文字にするとなかなかお伝えしずらい部分もあるなと思いますので、動画にでもしてまた改めて「アートノカケラ」とは何だったのかをお話しできたらと思いますのでお楽しみに!

追伸

多様性って大事だよね!なんてきいて久しいですが、この作品は見る人(角度)によってさまざまに姿を変えて見えるはずです。なぜなら参加者の皆様が多様性そのものを体現してくれているからです。皆様の目に映った世界、そのすべてが正解でありたいと思っています。ご覧いただいた皆様が様々な感想を持ち、考え、未来へ向かっていく。この作品を見た方が全ての方の意見をなるほど、そうも見えるのか、次はその目線で見てみようなんて思ってくれたら私はとても嬉しいなと思います。そしてまた自分の目線に気づき考える。それこそが多様性の必要性であり価値ではないでしょうか?

あしおとでつながろうプロジェクト・アートディレクター
塩田 久人

“あしおとでドラマするビジュアルパフォーマンス「アートノカケラ」を振り返る(総合演出目線編)” への4件の返信

  1. 塩田さんの、綜合演出目線編を読んで、泣きました。私も楽しかった!年を忘れて踊りまくった!筋肉痛が二日に渡っております。

  2. ピンバック: おどるなつこ

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