「育て!メッセンジャー2021 あしおとでつながるタップ&アートライブ Messengers On Line」を終えて(振付構成編)
昨日のオンラインライブが無事に終演いたしました。
ご視聴くださった皆様、ありがとうございました!
あしプロにとっては1年半のプロジェクトの、ある意味集大成でもありました。
公演中に120視聴、翌日で約200視聴と多くの方にこのチャレンジにお立ち会いいただいていることも、とても嬉しいです!
アーカイブ映像を公開しています。ぜひ何度でもお楽しみください!
「育て!メッセンジャー2021 あしおとでつながるタップ&アートライブ MESSENGERS ON LINE」
出演 阿部っち じぬっち 香菜子 たかと みのり Jimmy
ゲスト ぷーちゃん なっちゃん ももり (いそかつ)
映像出演 ジョイカンパニー(横浜市泉区)
いそかつ(横浜市磯子区)
BIG WAVE&BIG WAVE jr(大阪府岸和田市)
Kickin’ Dance Fam(山形県鶴岡市)
総合演出 塩田久人
構成振付 おどるなつこ
演出部 いとうすずの
会場協力 吉野町市民プラザ
企画制作 NPO 法人あしおとでつながろうプロジェクト(Arts Fund2021事業)
セットリスト
ーMC おどるなつこ
1.「映像ランウェイ~オープニング~」メッセンジャー 映像:塩田久人
2. 「パンダヒーロー」 ピアノ音源:大和田千弘
ーMC ジミー・じぬっち
3. 「Take the A train」メッセンジャー ピアノ演奏:Jimmy
4.映像 「Stand by me」 ジョイカンパニー
ーMC たかと・香菜子
5.「ダイナマイト」メッセンジャー 音源:BTS
6.映像 「Make you happy・ダイナマイト」/BIG WAVE&BIG WAVE jr
7. ゲストコーナー ぷーちゃん なっちゃん ももり(いそかつ)
8.映像 「あれはミラクル これはいそかつ」/いそかつ
ーMC みのり・阿部っち
9.「ダイナミック琉球」メッセンジャー ピアノ音源:大和田千弘
10.映像 「Hip Hop」 Kickin’ Dance Fam
11.「即興劇ハーモニー」メッセンジャー&いそかつゲスト ピアノ演奏:Jimmy 映像:塩田久人
ーMC おどるなつこ
12.「映像ランウェイ~エンディング~」出演者&サポーター全員 映像:塩田久人
どのようなチャレンジだったのか?
さて、このライブが私たちにとってどのようなチャレンジだったのか、少し解説したいと思います。
メッセンジャーズにとっては初めてのチャレンジづくし!
おどるなつこ抜きのステージ、初めてのMC、即興演奏に振付を対応させて踊ること、複雑なフォーメーションを仲間とつむぐこと、ゲストを迎えて即興劇をつくること、など、それぞれにとっては本番中も挑戦につぐ挑戦だったことでしょう。完全に指示がないなか、これまでやってきたことを踏まえて、各瞬間、各自の判断で場をつむぎ上げた!
では、スタッフ陣にとってはどのようなチャレンジだったのでしょう?
できないことをできるようにさせるのではなく、彼らの好きなことや得意な部分を伸ばした先にどんなことが広がるのかを見たい!と、1年半の稽古を進めてきました。期待して伝えればポンと消化してゆうゆう超えてくるメンバーに勇気をもらい、スタッフも常識にとらわれずにプログラムを進めてきました。
それは意識的に<支援の必要な人というカテゴリーから彼らを外した>ということかと思います。
むしろ、<スタッフ側の繊細さを磨く>というスタンスで全てを進めていきました。
彼らは、自分で判断して次の行動を決めるという機会が、同世代の人と比較するとあまり得られていないようでした。日常では、指示に従うことが多いのかもしれない。なので、こちらの指示に従わせるということを創作の中では極力無くし、状況を共有して、それぞれが楽しみつつ判断できるよう心がけていきました。
制作・創作テクニックの確立
まず、あしプロでは連絡メールの書式について、うんざりするほどのやりとりを重ねてきました。知的障害の状態も個別に違う中で、メッセンジャーが自分でそれを読んで理解して練習会に忘れ物や混乱なく参加できる表記はどれか?その言葉はひらがなか漢字か、文章か箇条書きか、曖昧なところはどこか?
全体を把握して、一つ一つ自分でできることが、ステージでは必要となります。ですので、まずこちらの現場やメールでの伝え方を整えていきました。その上でやっと「わからないことはなんでも聞いてね」と初めて言えます。
個人ではなくご家族がメールを受け取る方もいますが、極力言い換えなく伝わるように、毎回検討を重ねています。
ダンスでも、振付を絶対的優先とせず、ふと生まれた表現を取り入れてその人固有の表現を生み出していきます。
フォーメーションとは何か?:規則正しく美しい図形を作ることが目的にせず、互いにコミュニケーションをとりながら、それぞれが空間のどこにいるかによって関係性を変えていくことに重きを置く。
そのように、メッセンジャーに提案する動きの意味もとらえ直して伝えていきました。
例えばK-POPアイドルBTSの「ダイナマイト」の魅力はチームワークです。
他者がいるからこそ誰もが光ることができる。それをみせるナンバーであることを総合演出塩田からも伝えられ、理解するにつれ、メッセンジャーたちも「自分も前に立ちたい」とは言わなくなりました。あしプロでは、上手い人が前ね、という感覚での作品づくりをしていません。私は、元々の振付とフォーメーションを完全にコピーした上で、要素を抽出して伝えましたが、それぞれが消化して、本当に良いチームワークの見える作品となりました!
また、スタッフ陣は、状況説明を的確に行った上で、視覚・聴覚・空間把握・記憶・言語表現などそれぞれの得意なところに気づいていく時間とも言えました。それぞれの飛び抜けているところには、私たちには全くかないません。これは、実は通常の作品づくりや人間関係でも同様なこと、つまり、通常の創作現場と同じことをより細やかに行っているということです。
逆に、仕込みバラシなど危険の伴うことでは、お手伝いいただく方含めた全体に、指示系統をはっきり伝えるようにしました。横からのバラバラな指示は事故の原因となります。
このような制作・創作のテクニックについては、今後ご要望のあるところへお伝えしていきたいと考えています。
自ら時空をつくるという体験
本番中のスタッフ陣の動きもお伝えしておきます。
配信・映像(総合演出)、照明・音響(振付)、進行(演出部)として働いていた3名は、ステージから生まれてくる新たな表現を楽しみながら、舞台進行を間違えないことに集中し(笑)、出演者が90分のプログラムを進行するため必要なアナウンスをしていました。もちろん、私が見本を踊ったり指示を出すことなどありません。彼らの良い意味での緊張にハラハラドキドキしながら任せて見守るスタッフ側にとっても心の膨らむ時間だったと思います。
このようにして、コロナにより集まることとなった第一期メッセンジャーズは、月2回の練習会、仕込み、場当たり、ゲネプロ、本番、バラシ、という一連の経験を積み、“みんなで時空をつくる”というファンタジーをリアルな体験として手に入れたと言えるでしょう!彼らが、仲間との間でそれぞれ考え、自ら次の方法を選んで行った軌跡が、このライブ作品なのです。
このような作品がやっと実現したこと、本当に嬉しいです!
この価値を、どう宣伝したらいいのか、実はまだ言葉が浮かびません。
活動資金を集めるためにも、私はこの価値をなんとか言語化しないといけないのですが!
ゲストのいそかつメンバーも、初めての体験を心から楽しんでおられました!
上手い下手ではなく、みんなで力を合わせて、他者が楽しめる場をつくれた、ということがとても大きなことと感じています。
楽しい体験を広げよう!
「機会を重ねていけば彼らは本当に素晴らしい瞬間をつくれる!」という一念だけで、何年もの試みをしてきました。
時々言われてきたことに「能力が高い人はできる」という言葉がありました。もちろんそういう一面もあるでしょう。でも「人は誰もが機会を得られたら能力を発揮できる」のではないでしょうか?
私としては、関わる全員がフラットに仲間としてつくったこのライブで、それがやっと証明できたように感じています。
ということで、気持ち的に、ひと段落です。
今後、第二期メッセンジャーを募集していきます。遠隔グループとのプログラムも可能です。
まだ詳細を整えていないのですが、ご興味お持ちの方は、あしプロサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください!同じ志の仲間が増えていくことを、楽しみにしています!